理学療法士は国家資格でありながら、平均年収は約433万円(令和5年賃金構造基本統計)にとどまり、全産業平均の507万円を下回っています。
そのため「やりがい」だけで職場を選んでしまうと、数年後に給与や働き方、キャリアの面で大きな不満を抱くリスクがあります。
さらに、新卒で入職した職場を数年で辞めてしまうと「またすぐ辞めるのでは?」と採用側からマイナスイメージを持たれやすく、転職活動が不利になることも少なくありません。
最初の職場選びは、その後のキャリアを大きく左右する「最重要ポイント」なのです。
1. 給与は「やりがい」と同じくらい大事
厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、新卒(経験0年)の理学療法士の平均初任給は月額約24.8万円、初年度年収はおよそ306万円とされています。手取りは約20万円前後と想定しておくと現実的です。
また、2年目以降は賞与が満額支給されることで年収が大きく上がり、5年目で平均約369万円、10〜15年の勤続で400〜500万円台に達するケースも多く見られます。将来の生活設計を考えるうえでは、初任給だけでなく昇給や賞与の推移も確認しておくことが大切です。
多くの新卒理学療法士は「最初は仕方ない」と思って給与条件を軽視しがちですが、これは大きな落とし穴です。生活に余裕がなければ日々のストレスは増し、やりがいどころではなくなります。
たとえば、月収22万円でスタートすると奨学金返済や家賃でほとんど残らず、生活がカツカツになりやすいでしょう。一方、給与水準を比較して選んだ同期は、数年後に年収差が50万円以上となり、貯金や自己投資の余裕を持てることもあります。
給与は「今の生活の安定」だけでなく「将来の選択肢」にも直結します。必ず複数の求人を比較し、自分のキャリア設計に合った条件かどうかを見極めましょう。

給与比較には転職サイトを活用するのが効率的です。非公開求人や内部情報まで確認できます。

2. 昇給額を確認する
給与と並んで重要なのが昇給額です。理学療法士の昇給は一般企業と比べて低水準で、年間2,000〜4,000円程度が平均です。
仮に年間3,000円の昇給なら10年後でも月3万円しか増えませんが、年間1万円の昇給があれば10年後には月10万円もの差になります。この違いは将来の生活レベルや選択肢を大きく左右します。
面接の際には「過去3年の昇給実績」を確認してみましょう。求人票には載っていないリアルな情報を得られるはずです。

転職サイトでは「昇給実績の内部情報」が共有されることもあり、将来設計の参考になります。
3. 福利厚生を軽視しない
給与が低めでも福利厚生が充実していれば、生活の満足度は大きく変わります。たとえば家賃補助2万円があれば年間24万円、10年で240万円の節約につながります。さらに研修費の補助制度があれば、自費負担なしでスキルアップが可能です。
福利厚生は「長期的な安心感」をもたらす大切な条件です。給与と合わせて必ず確認しておきましょう。
4. 有給休暇は「制度」より「取得率」を見る
求人票には「有給休暇20日」と記載されていても、実際に取れるかどうかは別問題です。現場の雰囲気によっては先輩がほとんど休みを取らず、実際には使えない職場もあります。
一方で「月1回の取得を推奨」するなど、有給を取りやすい雰囲気を持つクリニックもあります。面接や見学の際には「平均でどの程度の有給休暇を取得されていますか?」と確認してみましょう。

聞きづらい内容は、転職サイトを通じて有給取得率や離職率といった内部情報を確認するのがおすすめです。
5. 残業時間と形態を必ず確認する
残業は「平均で何時間なのか」だけでなく、「どの業務が残業として扱われるか」まで確認しておくことが大切です。分単位で支給される職場は公平性が高い一方で、15分単位や30分単位でしかカウントされないケースもあります。
また、書類作成などが残業に含まれない場合は、実際の負担と給与のバランスが崩れやすくなります。見学や面接時には、残業の平均時間に加えて「どの範囲までが残業扱いか」を具体的に確認しておきましょう。

「分単位」「15分単位」など、残業の計算方法は必ず確認しましょう。書類業務の扱いもセットで聞くと安心です。
6. 中堅層の有無を確認する
職場の安定性は「30〜40代のスタッフがどれだけ在籍しているか」に表れます。中堅層は結婚や育児などライフイベントが多い時期で、働きにくい職場ほど離職しやすいため、結果として中堅が薄くなりがちです。
反対に、勤続10年以上のスタッフが複数いる職場は、働きやすさと定着の証拠といえます。見学の際は年齢構成と勤続年数をあわせて確認しておくと、現場の「居心地の良さ」が見えやすくなります。

「年代別の在籍人数」「長く働いている人の割合」を聞くと、定着度の目安になります。
7. 勉強会が盛んな職場には注意
院内の勉強会が多いこと自体は良い面もありますが、主催や発表準備がスタッフの持ち回りで、しかも業務外の時間に行われると負担が大きくなります。準備に時間がかかる割に残業扱いにならないケースも珍しくありません。
学びたい人は外部研修やオンラインで知識を十分に補えます。勉強会が盛んという理由だけで「良い職場」と判断せず、実際の運用(任意か、準備にかかる負担、時間外の扱い)を確認しておきましょう。
勉強会は成長機会になり得ますが、運営の実態次第では負荷につながることもあります。見極めが大切です。
8. 転勤の有無を確認する
大手グループでは数年ごとに異動・転勤が発生する場合があります。単身赴任や生活コストの増加は家計にも大きく影響するため、将来のライフプランと合わせて検討しておきたいポイントです。
一方、地域密着型の施設は転勤がなく生活基盤を安定させやすい傾向があります。応募時や面接時に「異動の頻度」「転勤の有無」を確認して、安心して働ける環境かどうかを見極めましょう。

将来の暮らし方(結婚・子育て・実家との距離)を踏まえて、異動や転勤のルールを事前に確認しておきましょう。
9. 転職サイトを活用するメリット
新卒は特に比較材料が少なく、個人で得られる情報には限界があります。転職サイトを活用すると、複数の求人を同じ基準で比較でき、登録者限定の非公開求人に出会える可能性も高まります。

自分で調べるより効率的かつ客観的に比較できるのが最大のメリット。登録は無料で数分あれば完了します。
10. 早期転職のデメリットも理解する
理学療法士の離職率は分野によって差があります。医療機関では約10.2%にとどまりますが、介護福祉領域では18.8%と高めです。特に訪問リハビリでは37.4%の離職率が報告されており、業務負担や環境の厳しさが影響していると考えられます。
また、年齢別に見ると21〜25歳(新卒〜数年目)の離職率は約16.5%で、6人に1人が数年以内に退職している計算です。つまり「最初の職場をどう選ぶか」が、その後のキャリアに直結しているといえます。
新卒で入職した職場を短期間で辞めてしまうと、「またすぐ辞めるのでは?」といった懸念を持たれやすく、次の選考で不利になる恐れがあります。だからこそ、最初の職場選びは慎重に進めることが大切です。

もしすでに「今の職場が合わない」と感じているなら、まず安全に職場を離れる選択肢を検討しましょう。そのうえで転職サイトで比較・検討を進めると安心です。

まとめ|新卒でも「職場選び」は戦略的に
理学療法士のキャリアは、最初の職場選びで大きく変わります。給与・昇給・福利厚生・残業の実態に加え、中堅層の厚みや転勤の有無、勉強会の運用なども含めて総合的に判断しましょう。
数年後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、今から情報収集を始めておきましょう。必要に応じて外部のサポートも賢く活用することで、安心してキャリアを築けます。
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